ソーシャルイノベーションの探求
複雑化した世界で社会の問題を解決するためには、人間の意識・無意識の構造を理解した上で深い変化を起こす必要があるとする探求が90年代のアメリカの経営学者の間で立ち上がった。
ピーター・センゲ「学習する組織」(1990年)
「システム思考」では、社会で起きることは互いに影響を及ぼし合いながらつながっているシステムであるととらえる。この互いの影響は目に見えず、影響が出るまで時間がかかることが多いため、個別のパターンだけを見ると、なぜその問題が起きているのかの深い理解ができず、解決すると思った打ち手も効果が出ない。
システム思考で全体をとらえることで、システムのパターンの全容が明らかになり変化を効果的に起こすことができる。
オットー·シャーマー「U理論」(2009年)
自身の思い込みやバイアスを理解し、そこから離れ、ありのままを観て感じる(内面の場の転換)と自ずと創りたい新しい未来が出現していく。個人·グループ·組織·社会の変容のプロセスを表した理論。概念的な整理に留まらず、環境的分断、社会的分断、精神的/文化的分断として表れている現状のシステムを転換するための、実践を伴う社会テクノロジーとしての側面も併せ持つ。
内面と外面の観察というと東洋思想のようだが、これを理論として社会課題の解決に繋げるという取り組みにアメリカの経営学の歴史の深さを感じる。