経営学がビジネスに役立つことが実感できる本
入山章栄
2015年 日経BP
著者の入山氏は現在は早稲田大学ビジネススクール准教授。朝のラジオ番組にもレギュラー出演しており、今をときめく経営学者。
本の発刊時はタイトルからはMBA的なアプローチを補完する内容を想起し、興味は持たなかったが、思いのほか面白く、自分の職場環境を良くしよう思うビジネスパーソンであれば誰にとっても役立つ内容であると思う。
その中でも個人的に関心と合致し、役立ちそうなポイントをまとめると…
◼️先端イノベーションの条件
知の探索と知の深耕の両利きを追求する。
クリエイティブなだけの人間はイノベーションを起こせない。
→「チャラ男と根回しオヤジ」のコンビをイメージして推進する。
◼️組織学習論
組織学習で大切なのは「誰が知っているか」が共有されていること(トランザクティブ・メモリー)。これを高めるには直接対話によるコミュケーションを増やす。
→チーム内外の人とフェイストゥフェイスで話す仕掛けを行う。
◼️グローバル化
グローバル化=フラット化は幻想。現実は鎖国と世界一国化の中間状態である。
ベンチャーキャピタル投資など、資本の結び付きは都市間の連携が強まる。
→単純なグローバル化には一歩引いて見る習慣が必要。
◼️リーダーシップ
リーダーシップにはトランザクティブ・リーダーシップ(アメとムチ)トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(啓蒙型)の2種類ある。後者のほうが高い成果につながりやすい。
成功するリーダーに共通する話し方はビジョンに訴える。優れたビジョンは、簡潔・明快・ある程度抽象的・チャレンジング・未来志向・ブレない、の6つの特性がある。
→伝える際は、相手の五感に訴えて、情景が浮かぶように話す。
◼️起業家精神
革新性・積極性・リスク志向性の3つが小規模企業が成功するために必要な経営幹部の姿勢である。
革新的な事業を生み出す起業家に共通する思考パターンは
Questioning
Observing
Experimenting
Idea networking
の4つ。
→絶えず知の探索を続ける。
科学的アプローチでビジネスの課題解決の研究を行っている米国のビジネススクールではドラッカーを読む人はいない、という。
日本の多くの伝統的な組織がイノベーションを起こすことに苦しんでいるが、日本の経営学が立ち遅れ、経営課題の解決について科学的に捉えられていないから、と思わされた。
その意味で著者の様な経歴の持ち主が国内で精力的に研究活動を行なって欲しい。