【読書メモ】統計学が最強の学問である-シリーズまとめて
書名:統計学が最強の学問である データ社会を生き抜くための武器と教養
著者:西内啓
出版:ダイヤモンド社
2013年刊 データ社会を生き抜くための武器と教養
2014年刊【実践編】データ分析のための思想と方法
2016年刊【ビジネス編】 データを利益を変える知恵とデザイン
シリーズ累計50万部を超えるという統計学ブームの火付け役とも言える本。
本書が統計学に光を当てたと言っても過言ではないが、機械学習やAI全盛の時代にあって、統計学の必要性は自明であった。むしろセンセーショナルなタイトルとシンプルなブックカバーで注目を集めた、ダイヤモンド社のマーケティングの勝利であろう。
(これもデータ分析の成果か?)
本書は統計学の理論を学び、使えるようになるための教科書ではなく、統計学の発展の歴史、社会・ビジネスでの活用について解説した読み物として捉えるのが良い。実際に身に付けるための優れた教科書の紹介もある。ただし、統計学の教科書が手薄な、様々な統計手法についての学問やビジネス場面での活用方法について、分かりやすく、幅広く触れられているので、統計学を勉強し始めたけれど、教科書のとっつきにくさで、諦めてしまいそうなときに最適である。
◆ビジネス編メモ
実務に生かすには、このビジネス編まで読むことが必要。段階に理解を深める構成になっており、その場で完全に理解できなくても実践編まで一通り目を通し、後からリファレンスとして活用するのが良いであろう。
①経営戦略のための統計学
・分散成分分析により産業要因が企業の総資本利益率のバラつきが19.6%説明できる(ポーターのSCP理論の裏付け)。しかしその後の調査では「企業要因のほうが大きい」(ジェイ・バーニーのリソースベースとビュー)という結論づけられる結果が続いた。
・経営分析のアウトカムとしては総資本利益率(ROA)を用いるのが良い(シュマレンジーやルメルトの事例)
②人事のための統計学
・「戦略よりも人材」という真実が、ジェフリー・フェファー(スタンフォード大学の研究)や、フランク・シュミットとジョン・ハンターの採用に関する定量的研究で明らかになっている。
・選考方法ごとの業績説明力
ワークサンプルテスト 29%
一般認知能力テスト 26%
アセスメントセンター 14%
一般的な面接 14%⇔構造化面接 26%
このようなエビデンスに基づき、Googleは構造化面接、ワークサンプルテスト、一般認知能力テストを組み合わせて採用する方針を取っている。
・「非常に優秀な人材とそれ以外」と「普通以上の人材とダメな人材」を分けつ要因は別であることが多い。
・ハイパフォーマンス・ワーク・プラクティス(HPWP)への取り組みをしている企業ほど業績が良い。
・ハンブリックらは経営層の能力や特徴が企業の能力や特徴の基礎づけるという上層部理論を提唱した。
・心理学者のフィッシュバインらは統合行動理論(人間が何によって行動を変えるかを明らかにする)を提唱した。態度・規範・コントール感(自信)の3つの行動制御要因が行動の背後にある。
行動を背景を探るための質問紙設計にあたってはこの統合行動理論のフレームを参考にするとよい。
◆統計基本事項メモ
Q.なぜ統計学は最強の学問なのか?
A.どんな分野の学問でも、データを集めて分析することで最速、最善の解が得られるから。
Q.統計学の活用で肝になる2つは?
A. 誤差と因果関係。
Q.因果関係の有無を明らかにする為の最も強力な手法は?
A.ランダム化比較試験(A/Bテスト)。フィッシャーが発明した。RCT(Ramdomized Cotrolled Trial)ともいう。
→疫学など、実験できないものに対してケースコントロールの手法が生み出された。
Q. 統計学の3つの目的は?
A. 因果関係の洞察・現状の把握・今後の予測
Q.適切なサンプルサイズを出すために使うものは?
Q. 因子分析とは?
A.物理的に見えない概念の背後にある要因(説明変数)を量的に測定(知能、能力など)
Q.因子分析の因子数はどう決める?
A.分析者が感覚で決める。収まりが良ければよい。
Q.クラスター分析とは?
A.相互に異なるグループに分類する手法
Q.ステップワイズ法とは?
A.重回帰分析を行う上で複数の説明変数から最も優秀なものを探す方法。